白き祈り

夜の底に 沈む声
名を失くした 風が鳴く
ひとひら 落ちた白い羽
それは まだ熱をもっていた

わたしは 歩く
忘れられた廃墟の 骨の上を
涙ではなく 花をたずさえ
傷ではなく 光をもとめて

だれも知らない うたを
だれも届かぬ 空へ向けて
やさしく 小さく 唱えると
ひとつ かすかな鐘が鳴る

もしも わたしが
誰かの悲しみに触れられるのなら
この手のひらを 空へ差し出そう
白き祈りが まだ消えぬうちに

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