ぬくもり

言葉よりも はやくそっと 肩にのった手のひらそれだけで なにかがすこし ほどけていった ひとのぬくもりは火よりもやさしく...

第六感

耳をすませば 聞こえる気がしたまだ誰も 言葉にしていない声風の奥 光の裏側ひとつの「気配」が そこにいた 目には見えない...

神さまが消えた日

神さまが消えた日空は 何も知らない顔をしていつものように 朝を連れてきた 鐘は鳴らなかった祈りの言葉も どこかへ行ったそ...

見送る者

崩れる音は とても静かだったまるで 誰かの寝息のように石が 記憶を手放していくわたしは 立っていた助けることも すがるこ...

きっかけ

最初は ほんとうに小さな音だった誰も 気づかなかった朝の鐘の陰で 石がひとつ 落ちただけ 空は青く 鳥は歌っていた人々は...

崩れる前

ひかりが よく差し込む窓があった花は 城のいたるところに咲きこどもたちの声が 中庭に響いていたそれは まるで 永遠の午後...

崩れた城

かつて ここには旗が揺れ 歌が響いていた誰かの笑い声が 石に染みこみ朝も夜も 花が咲いていたでも 今はもう風しか知らない...

手紙の届かない場所

この場所には ポストがない空を飛ぶ鳥も 風も通らないだから私は 返事のない手紙をそれでも書き続けている インクは滲み 文...

沈んだ時計塔

湖の底に 鐘が鳴る時を忘れた 水のなかでひとつだけ 針が動いていた誰も気づかぬ 夢の終わりに 水の中で 眠る町浮かぶ家、...

朝が来ない村

夜が降りたまま 日は昇らない時計の針も 眠ることを覚え火は消えず 影は消えないここは 朝のない村 人々は だんだんと夢を...