沈んだ時計塔

湖の底に 鐘が鳴る

時を忘れた 水のなかで

ひとつだけ 針が動いていた

誰も気づかぬ 夢の終わりに

 

水の中で 眠る町

浮かぶ家、沈む声

音は揺れ 言葉は溶け

時計だけが 真実を指していた

 

ある日 目を覚ましたのは

ひとりの少女だった

名前をなくし 過去もなくし

ただ その目に “なにかを待つ”光があった

 

「私は ここにいたことがある」

心のどこかが そう告げていた

そして 少女は 水を裂き、塔の鐘へと向かう

眠る時間を もう一度 目覚めさせるために

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