ひかりが よく差し込む窓があった
花は 城のいたるところに咲き
こどもたちの声が 中庭に響いていた
それは まるで 永遠の午後
誰かが そっと楽器を奏で
誰かが 祈るように 本を読んでいた
言葉は やさしく 温かく
重ねられる日々の中に 未来があった
石は 冷たくも 頼もしかった
壁は 守るためにあり
扉は 迎えるためにあった
この城は 心そのものだった
まだ なにも失われていなかった
だからこそ わたしたちは
失うことを 考えなかった
終わりなど 来ないと 信じていた
けれど いつかの日
小さな亀裂が 柱を走り
風が ひとつ 名を奪っていった
わたしたちは 気づかなかった
それでも あの日々はあった
消えないものなど ないけれど
美しかったことは 真実だった
わたしの中で 今も息をしている
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